7月21日、秋田県教育会館を会場に「あきたこまちR」を考える市民講演会が開催されました。主催は共同テーブル秋田を中心とした講演会実行委員会で、講師は日本消費者連盟運営委員の原英二さん。「あきたこまちR」をめぐる問題について、農業者と消費者がともに考えようというねらいで企画されました。
秋田県はコメのカドミウム汚染対策として、2025年度産米からこれまでの「あきたこまち」を「あきたこまちR」に全面的に切り替える方針を決めています。「あきたこまちR」は重イオンビーム照射によって遺伝子を改変させた「コシヒカリ環1号」と「あきたこまち」を交配させた品種です。この品種はカドミウムの低吸収性を特徴としていますが、同時にイネの生育や人の健康に欠かせないマンガンの吸収も3分の1以下に低下すると言われています。また必須ミネラルの亜鉛の吸収率も低下します。コメ農家からはこれまでの「あきたこまち」の生産も保障してほしいという声があがっており、農家が作付け品種を選択する権利を制約する「全面切り替え」には大きな問題があります。
重イオンビーム育種米の安全性について県は問題ないとしていますが、科学的な検証が行われているわけではなく、消費者が自ら判断する以外にありません。ところが、「あきたこまちR」はこれまでの「あきたこまち」と同一銘柄として販売するとしているため(「あきたこまち」として店頭に置かれることになります)、消費者には区別がつきません。これでは食品表示法が目的とする「食品に関する表示が食品を摂取する際の安全性の確保及び自主的かつ合理的な食品の選択の機会」が奪われることになります。
私たちが食べている農産物は、それぞれの地域の気候風土に合った品種が栽培され、地域の共有財産として定着してきました。種子法廃止、種苗法改悪によって地域の種子は危機的状況にあります。「みどり戦略」で有機農業を推進すると言いながら、ゲノム編集や放射線育種、工業的農業など、農業者を置き去りにして不自然な農業へと農水省は向っています。地域のコメや農業のあり方は国が決めることではなく、地域の生産者と消費者が決めるべきものです。生産者と消費者がともに声を上げ、あきたこまちを守っていきたいものです。